ライナー選択が圧力分布、疼痛および歩行快適性にどのように影響を与えるか ― 大腿切断者を対象とした臨床ケーススタディー
竹内 豊計, 義肢装具士、PhD.
山本 敬三, 北翔大学教授、PhD

義足ライナーは、断端と義足ソケットの界面において極めて重要な役割を果たします。義足ライナーは皮膚とソケットの間に単なる緩衝層を設けるだけではなく、圧力分布、安定性、快適性、そして最終的には歩行の質に直接影響を及ぼします。
最近実施した臨床ケーススタディーでは、歩行時に強い疼痛を訴える大腿切断者に協力を願い、この関係性を検証しました。このスタディーでは数種類のライナーを比較し、歩行中の圧力測定を実施することで、ライナーの選択が特に脆弱な断端部位に加わる負荷にどのように影響するかを明らかにしています。
臨床における課題
患者は非常に短い大腿切断の断端を有しています。切断当初は、断端遠位端周囲に軟部組織が残っていたため、大きな問題はありませんでした。しかし経時的に軟部組織の萎縮が進行し、断端遠位部の骨突出が顕著になりました。
その結果、一歩ごとに断端遠位部の骨性部が義足ソケット内壁に繰り返し接触し、歩行時に強い疼痛が生じていました。そしてこの不快感が歩行時の快適性および機能の両方に悪影響を及ぼすようになっていました。

断端を屈曲させると、骨性突出がさらに顕著となります。この部位がソケット内部で繰り返し接触していたと考えられ、これによって生じる局所的な圧力が、患者が訴える強い疼痛の主な原因であると推定しました。

ライナー選択による初期的な改善
歩行時の圧力測定
断端遠位部の骨性突出がソケット内壁に接触すると想定される部位に圧力センサーを設置しました。その後、患者に通常の歩行条件で 20 秒間歩行してもらいました。
試験に用いたライナーは 市販シリコーンライナー、EasyGel、OptiGel の3種類です。
このようにして歩行周期全体を通じて圧力データを取得し、疼痛のある遠位部位にかかる負荷を定量化を行い、患者が感じた疼痛改善効果を機器計測上でも確認できるか検証を行いました。

測定結果:OptiGelの示す圧力値が最も小さい。
この測定結果は患者の臨床的な自覚症状とよく一致しています。3 種類のライナーの中で、市販シリコーンライナーでは圧力値が最も高く、EasyGel では圧力が低下していました。また今回の測定条件下では OptiGel が最も低い圧力値を示しました。


市販シリーンライナー、EasyGel, OptiGelの圧力値比較。各点は一回の測定値。◆は平均値を示す。
圧力センサーによる測定結果は患者の訴えと一致した。すなわち疼痛を感じる断端遠位部位の圧力を低減することにより歩行時の快適性や疼痛を低減する。その改善はソケットの修正や軟らかなパッドによる改善を実施することなしに達成された。
感触だけによるライナー性能評価の問題点
この評価から得られた一つの最も興味ある知見は手で触れた感触と歩行時動的環境下での性能との関係性です。OptiGelはシリコーンに似て比較的硬く安定した感触を持ちます。それに比べてEasyGelは手で触れた場合容易に変形する感触を持ちます。
しかし歩行中OptiGelはEasyGelや市販シリコーンライナーよりも優れた圧力分散性能を発揮します。
圧力センサーによる測定結果は患者の訴えと一致しました。すなわち疼痛を感じる断端遠位部位の圧力を低減することにより、歩行中の疼痛を軽減することができました。ここで重要なのは、このような改善がソケットの修正や軟らかなパッドを付けることなしに達成できたことです。
安定性と圧力分散性能とのバランス
ライナーを選択することは、安定性・コントロール性と、クッション性・圧力分散性との間の妥協点を見出すことであると捉えがちです。今回行った評価からOptiGelは局所的な荷重に対して優れた圧力分散性能を示すと同時に、ライナーに求められる確実かつ安定した装着感を持つことが証明されました。これにより、安定性・コントロール性、圧力分散性、装着時の快適性、そして歩行パフォーマンスがサポートされているといえます。
本症例は、単純ながらも重要な臨床的課題から始まりました。大腿切断後の断端が非常に短い患者において、断端遠位部の骨性突出部と義足ソケットが歩行のたびに接触し、痛みが生じていたのです。ALPS製ゲルライナーの使用により、ソケットの修正やパッドを使用することなく、患者の状態は初期段階で改善しました。その後の圧力センサーを用いた歩行評価により、ライナーの素材間で測定可能な差異があることが確認され、評価条件下での歩行においてOptiGelが最も低い値を示しました。特筆すべき点は、本症例が「安定性」と「圧力分散」を必ずしもトレードオフ(二者択一)の関係にする必要はないことを実証していることです。OptiGelは、確かな安定感を維持しつつ、効果的な動的圧力分散も実現しました。この両立は、臨床家が過敏な部位や骨突出部、あるいはその他の圧力管理が難しい課題に対処する際、特に有意義なものとなる可能性があります。





